私を構成する9演目
とかいう面白そうなネタを見つけたのでやってみんとす。
5年という至って浅い観劇歴の中でいろいろ観てきましたが、これが思い出そうとしても忘れているものがほとんどでした。
の、中でスルスル記憶のツルが出てきた演目なので紛うことなき私の血肉となっているはずです。
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1.『TEXT』(2007年2月)
ラーメンズ第16回本公演『TEXT』。
本来ならば「演目」というならこの中から選ばなくてはならないのかもしれないけれど、すべて繋がってひとつの「TEXT」を作っている中から一つ選ぶことはできませんでした。ご堪忍。
実を言うと、生で(リアルタイムで)観てません。
「条例」より
恐らく中学2年の冬に彼らにどハマリして、わりかしすぐにDVDで観た公演だったと思います。
小さい頃からなぜか国語は好きだったけれど、私は「日本語」が好きなんだと気づかせてくれた大切な公演です。
2.『うるう』(2012年2月)
そう、ひとり舞台、と思って物語は進んでいく。けれど、まるで裏方に徹するようにして舞台に佇むチェリストの徳澤青弦氏が、最後でイイトコ持っていく。
「何でもないことを大げさに見せ、度肝を抜くネタを何食わぬ顔で仕掛ける」コバケンのお家芸がふんだんに詰まった演劇作品。
何を隠そうこの作品、私が自らの意思で自らの小遣いを支払って劇場に観に行った、初めての作品です。
高校2年の冬、放課後に制服のまま駆け込んで当日券で観た憧れの人が私を観劇沼に引きずり込むのは、何も難しいことではなかったのでした。
3.『365000の空に浮かぶ月』(2015年1月)
今をときめく斎藤工がいることもあってチケット戦争は激戦を極め、本来行けないはずだった福士ファンである私、知り合いのご厚意のおかげで一度だけ観ることができました。
平安、明治、昭和、平成。四つの時代が交錯し、血筋と想いと「月の石」が時を越えて人と人を繋ぐ。
解き明かされないままの暗号や張り巡らされた伏線を、観劇後も何週間もこねくり回して余韻に浸れる良作でした。
4.『狂人なおもて往生をとぐ』(2015年2月)
引き続き福士誠治座長舞台。
娼婦と客を演じる家族、家族ゲームの枠、何が「ごっこ」で何が真実なのか、時間とルールに縛られながら狂気に満ちていくある家族の悲劇的な末路。
初めて同じ演目を複数公演観ました。
シアターウエスト、豊橋、兵庫の3カ所で観ましたが、やっぱり小劇場演劇の金字塔だけあって、シアターウエストの閉塞感は最高にマッチしてましたね。
戯曲も、セリフを覚えるほど何度も読み込んで観劇し、当時履修していた演劇史の授業で4000字ほどのレポートも提出しました。
そんな観方をして何が楽しいんだか、と今になっては思いますが、今もアングラ演劇特有の狂気がかった雰囲気や毒気は嫌いじゃないです、むしろ好き。
5.木ノ下歌舞伎『三人吉三』(2015年6月)
再びシアターウエスト。
通常の歌舞伎で通しでやると上演時間が驚異の10時間超だそうで、有名な「大川端の場」のみの上演がふつうなんだそうですが、木ノ下歌舞伎、一つの場もまるごとカットすることなく通しでやってくれました…!
登場人物の因縁が複雑に絡み合うこの演目を、予備知識無しに一度だけ観て話がわかる…
わかるどころか「あぁそれを言うからこじれる!」「あぁ彼と彼が敵同士だったんだ」とことのほか感動して帰ってきました。
当時、『狂人なおもて〜』のおかげでアングラにお熱だった私が、なんとなく授業の中で耳にした「三人吉三」のワードに反応して観に行った舞台。Road to 歌舞伎沼 のスタート地点になるとは、この頃の私は知る由もない。
6.阿弖流為(2015年7月)
何故観に行ったのだろう。
別段好きな役者が出ていたわけでもなく、話を知っていたわけでもない。
(実は阿毛斗役で坂東新悟が出ているのだが、それに気づくのはその数ヵ月後である)
絵に描いたような「なんの気なし」でチケットを取り、新橋演舞場に出向きました。
初めての新橋演舞場、生で見る花道や殺陣や見得に、ドキドキしっぱなしだったのを覚えています。
そして観劇前に配られた小さな青ライト。
最後の場面で星空を演出するためのものだったのですが、3階席から見下ろす蝦夷の星空は美しかったです。貧乏席も悪くないな。
これで惚れた
7.スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』(2015年10月)
ワンピースを読んだことはありません。
歌舞伎もよく知りません。
なので今回は「後悔する前にまずチケットを取れ!!」ということをモットーに、あくまで「とりあえず」取っただけでした。
最初は。
ところがドッコイ、蓋を開ければ超楽しい…
ワンピースを知らなくても、歌舞伎を観たことがなくても面白いなんてあるものかと驚きました。
8.『三人吉三巴白浪 大川端庚申塚の場』
初めて、自らの意思で観に行った古典歌舞伎でした。まだまだ思い出も新鮮な2016年の新春浅草歌舞伎。
有名なお嬢のあの台詞は授業で習っていた、話は木ノ下歌舞伎で知っていた、初めて意味がわかる中でいわゆる「歌舞伎」を観た……
若手のみの歌舞伎公演、劇評にはいろいろ書かれていたけれど、この先彼らが大物になって私もいろんな演目を観るようになっても、この『三人吉三』は忘れないだろうな。
9.『棒しばり』(2016年シネマ歌舞伎)
ただのかわいいおじさん
大名の留守中に勝手にお酒を飲まないように、と棒に括られ腕を縛られた太郎冠者と次郎冠者が、それでもなお不自由の中必死に酒を飲み、酔って踊るというシンプルな舞踊かつコメディー。
私はもともと全然舞踊には興味がなかったんですが(興味がないあまり新春浅草歌舞伎の『土佐絵』の記憶もあやふやという…)、それこそ「巳之助さんのお父様だから」という理由だけで観に行ったら「舞踊って面白いじゃん!」となったわけです。
きっかけってどこに転がってるかわかりませんね。
勿論、この演目を生で観たことはありません。観たかった…
肉体の芸術の最も辛いところは、最も強いところでもあると思うんです。
陽気な太郎冠者と次郎冠者を、この先何年も何十年もブラッシュアップしていってくれる役者さんがいることに感謝です。
……昨年八月の納涼歌舞伎は観てません(悔)
定期的に観たくなるリズミカルな舞い。
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長ーーーーくなりました。
歴が浅いうえに演目も偏っているのがバレバレ。
自分がいつ頃何にハマってたのかよくわかりますよね。
2013〜2014年も舞台は観たはずなんですが、一向に思い出せない……
たぶん小林賢太郎ばかりだったと思います。
後半歌舞伎ばっかじゃねぇかって怒らないでください。
これだけ歌舞伎が出てきたってことは今の私を構成しているのは歌舞伎が大きいんだと思います。
たった5年間で観てきた、たった何演目ぶんの9です。
これからどれくらい分母が大きくなるのかな。
その頃にまた9演目、選んでみたいですね。
ご静聴ありがとうございました。
ツチカワ