ひとつなぎ
財宝を探しに荒れ狂う海へ冒険に出たわけではないですが
飛行機の中で TETOTE を聴きながら書いています(泣きそう)
新橋演舞場では写真は禁止だった気がするのですが、周りバシャバシャ撮りまくってるし禁止のボードもなくなっていたので私もちょいと。
新橋の初演を観てから約5ヶ月。
3月の松竹座公演から変更点やキャスト変更があったものの、物語の邪魔をする事は決して無く、むしろ「どこか変わってた?」くらいの感じでした。
でも確かに細かいところを見れば
「天竜人登場が花道ではなくせり上がりになっていた」
「ボン・クレー初登場シーンで一瞬ゾロが現れる」
「ハンコックが小林幸子になった」
etc……
他にもきっといろいろあったのだろうけど、時間が経っているうえにあまりに自然だったから気づけなかったかもしれない。
ボン・クレーの初登場、ゾロの頭だけ出してルフィーを呼びかけ、再び布をかぶり、次の瞬間布をとったら「なーんちゃってぇ!!」とボン・クレー。
観ている時は「よくもまぁこんなパッとすぐ声色を変えて芸達者なこと」と感心していたんだけど、あとから考えたら髪もすぐボン・クレーに変えていたし、マネマネの実の能力者であることの強調だったのだろうなぁ〜と思うとあの一瞬だけでも変更した意味があるってものですよね。
話を印象づけながら役者の達者ぶりをも強調。
なーんて素人目線ながら歌舞伎「らしい」なぁなんて思ってしまいました。
THE・二枚目なイナズマに色気たっぷりのサディちゃんの立ち回りが、あまりに美しくて輝かしくて気づいたら涙が出ていました。
極めつけにボン・クレーが六方踏んで花道を帰っていく独壇場。
初めてかっこよすぎて号泣するという経験をしました。
(正直13日は私の楽日だったこともあって本水からカテコまで泣きっぱなしだったんですけどね)
このボン・クレー役をやったのが坂東巳之助。
他にゾロ、スクアードと三役で出ています。
硬派な剣士をやったかと思えばキャラの濃いオカマ、最後には痛いほど真っ直ぐで切なさを抱えた海賊役。
ボン・クレーのかっこよさに泣かされ、スクアードの切なさに泣かされました。
「ボン・クレー以外にも出てるので…」
と本人は言うけれど、あれだけかっこよさ出されたらやっぱり惚れるよ〜…
あまりにタイプの違う三役をやったものだから、「坂東巳之助の三役がすごい!」とかなり話題になったし、私も「ワンピース歌舞伎観に行って坂東巳之助に落ちないで帰ってくる人なんているの?」っていうのは正直なところであります。
しかしながら
新橋の初演を二回観に行って、ゾロ、ボン・クレー、スクアードを同じ人がやっていたと知ったのはだいぶ後でした。
ルフィーとハンコックが早変わりだったことを知ったのも、二回目のとき。
チョッパーに「こっちだよ!」って言われてまんまと後ろを向き、はたと前を向いたらチョッパーがいた(義経千本桜の四の切のあれですね)、ってのにも毎回引っかかりました。
純粋に「演劇」を観ていたからだと思います。
逆に言えば、古典の、早変わりや複数役を勤めることへの「すごーい!」は味わえなかったことになります。
「役者ありき」を味わえなかった最初二回も楽しかったのは、純粋な演劇としてもワンピースが楽しめる作品だったからだと思います。
「歌舞伎」の楽しいところも、「演劇」の楽しいところもいいとこ取り。
私のようにここからいわゆる沼にハマった人は大勢いたはずです。
12日、帰りながら近くを歩いていたマダムの方が「また観たいわ〜!」と言っていました。
たった数ヶ月前にハマった私が何回も観たいと思った気持ちが、時差で共有できたことが嬉しかった。
13日、近くの席の博多ギャル(かは知らない)が「クロコダイル知らない」「誰も知らない(笑)」「でもイナズマかっこよかった!」「ボン・クレー可愛い」と話しているのが聞こえました。
私もワンピース読んだことないよ。
歌舞伎だって観たことなかった。
イナズマかっこいいでしょ?ボンちゃん可愛かったでしょ?
私もそこから徐々に「観たい、知りたい」と思い始めました。
イナズマは残念ながら来月はロサンゼルス公演になってしまうけど、ボン・クレーは歌舞伎座に出るはずなのでぜひ。
ロサンゼルスよりは近いでしょ。
私は今日が新橋初演含む『スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース』の千秋楽だったけれど、もちろん今日が初日の人もいるわけで。
私が(私の)初日で感じたことを、今日が初日だった知らない人とこっそり共有できたことが嬉しかった瞬間でした。
元はといえば新橋演舞場の初演にはエース役で
福士誠治さんが出ると聞いて「ん〜じゃあとりあえず行っとくか。ワンピ知らんけど」程度のノリで行ったワンピース歌舞伎。
中村隼人から興味の範囲を広げて若手歌舞伎役者にハマる。
気づいたら歌舞伎が好きになっていた。
ワンピース歌舞伎が、私と歌舞伎をひとつなぎにしてくれた。
同じようにワンピース歌舞伎によって歌舞伎を知った、見ず知らずの人とひとつなぎの感情を共有することが出来た。
すごく大切な舞台になりました。
ああ、楽しかった…!!!!!!!
私にとってのひとつなぎの宝です。
縁ってふしぎ。
えん!
EN!!
えんのすけ!!!
(ワンピロスがもう甚だしい……)
ツチカワ