菅原伝授手習鑑をコンプリートしました
と言っても「ドラマの最終回だけリアタイしてそれ以前の話も気になったから動画サイトで観てみたけど7話だけ見つからなくてその部分だけ原作漫画を読んだ」みたいな感じなんですけど。
どういうことかと言いますと、
四段目の 寺子屋 は昨年どういうわけか3回も観たんです。挙句現代劇バージョンも観たしね。なんならその現代劇で菅原伝授手習鑑を好きになったんだけど。
当然それ以前の話も気になりだしまして、動画サイトを漁ったら加茂堤、筆法伝授、車引は観られたんですが、賀の祝だけ見つからず。
今回ようやく元ネタの文楽を観るに至ったわけです。
歌舞伎は学校で観たりもしましたが、文楽を観るのは恐らく今回が初めて…!
文楽人形って思ったより結構大きいんですね。
そして登場人物の台詞は全員太夫さんの語り!
子どもから大人、女房、娘…笑い声から泣き声まで。
席が遠かったことや技芸員さんたちを皆さん知らなかったというのもあり、“人形を動かしている”という状態を忘れることがしばしば。
まるでアニメを観ているのに近い感覚。
(だとしたらナレーションから声優まで同じ人が演じ分けるってすごくない!?)
そして人形のかしらはいくつか種類があり、今回だと茶筅酒の段での松王丸女房千代と梅王丸女房春は老女方(ふけおやま)と呼ばれるかしらが使われていたそうですが、着物の色から顔からほとんど同じで私の席からはどっちがどっちやねん状態……
と、思いきやよーく見ると着物の裾に千代は松、春は梅の柄がきちんと描かれているんですね!安心!と同時に夫とペアみたいでかわいいね!
菅原伝授手習鑑なんて人は争うし生き分かれるし死に別れるし、待っているのは悲しい展開ばかりなのでかわいいところがないとやってられないよね。
そんなわけでようやく観ることができた茶筅酒の段は割と和みパート!
愛されキャラっぽい八重ちゃんと白太夫のやり取りが微笑ましくて可愛い。
そしてあれよあれよと集まる息子の嫁たち。
これ歌舞伎だったらあれですよね、女方さんたち大集合ですよね。最高だね。
一番好きだったのはみんなでお料理ですね。
八重ちゃんお料理苦手なのかな?
お味噌うまくすれなくてすり鉢たおしちゃう八重ちゃんドジっ子。
お姉さんな千代さんと場所変わって包丁持ったとたん感じるフラグ。
もうアニメかよっていうレベルのやらかしっぷりが可愛い。
あまりにも可愛くて入り込みすぎて千代お姉さんと八重ちゃんの姉妹みに萌え萌えしたところで「ア、これ人形か」と気づくという。
改めて萌えに垣根がないことを学びました。
喧嘩の段で出られた咲寿大夫さんがとっても美声。
張りがあって声量があって梅王と松王の喧嘩が激しくてよかったなあ。そして何より女性陣のお声が美しくて〜〜〜〜!推した。すーぐ軽率に推す。
この喧嘩の場面は「歌舞伎だとコミカルな場面」だと聞いていたけれど、梅王が松王を蹴飛ばしたり投げたり、米俵をぶつけたりする度に笑いが起きた。
人形だから、表情は変わらないのに奥にいるお嫁さんたちが気が気でないのがよくわかります。ハラハラ。
そして折れる、桜の枝。
枝が折れるというか木が倒れるというか…
文楽のサイズ感だからなのか歌舞伎でもあんな感じなのかはまだ分かりませんが、確実にここで納戸にいるであろう桜丸、クジに願掛けをしている白太夫が見えた気がしました。
自分の子どもの生死をクジなんかに頼むなよー…
と、現代に生きる私は思ってしまうわけでしてね。それがこの演目の、というか古典芸能の面白いところなんだと思うんですけど。
訴訟の段の半ばあたりからもう涙腺が緩み始めている私。
松王を勘当し追い出した白太夫の想いも、願い出をはねのけられた梅王夫婦の想いも、夫と共に出ていく千代の表情も。
ギューッとなりましたね。
夫の気持ちが見えずその身を案じる八重の前に現れる桜丸。
この場面をずっと観てみたかった。
「下郎ながら恥を知り…」の台詞を濃く覚えている。
さっきまで大根を切って指まで切ってしまうようなお茶目でドジな八重ちゃんがずっと泣いている。
現代劇で観た時のような劇的さではなく、鐘の音と白太夫の声だけが聞こえる舞台上、涙に暮れる八重。
泣くない。あい。
の掛け合いの時点ではもはや同じ人が声をやっていることなんて忘れて大号泣でした。
この場面、桜丸の切腹の場面だけれど八重が悲しみの中心にいる感じがするなぁ。
茶筅酒の段でほのぼの笑っていた八重と白太夫の悲劇。別れ。
隠れていた梅王夫婦を見ると、歌舞伎女子大学のお芝居を思い出します。
何度も観た寺子屋。
寺入りの段は一度だけ歌舞伎でも観たことがありますが、その時は寺入りからダダ泣きだったことを覚えています。
今回も今回とて、千代と小太郎が別れる場面で涙…
ここが、千代がわが子の顔を見る最期の時だったんだなぁ。
とはいえ悲劇続きのお芝居の中でつかの間の笑いが涎くり!歌舞伎では私はなぜか明石屋のご兄弟の涎くりばかり観ています(笑)
菅秀才に口答えをしてこませこませー!と周りの子ども達から叩かれる場面がとっても可愛くて笑える。
なんだかやたら強めに叩く子どもがいたなぁ、下手側。(笑)
迎えに来た父親をおぶって帰るのも歌舞伎と同じ。子どもたちが帰ってからはご存知の通り、悲劇ラッシュです。
歌舞伎にしても現代劇にしても文楽までもやはり小太郎の首を落とすところはむごいですねぇ。
戸を隔てているから見えないんですけどね。
持つべきものは子どもだ、倅はお役に立ったぞと。桜丸はきっと羨ましかろう。という松王に、小太郎はもうすぐ伯父御に会いますよ。と千代が答えるところ。
そうか、小太郎にとって桜丸や梅王丸は伯父だったんだ。
きっともう八重も向こうにいるはずだから、小太郎から色んなことを聞いて、時平を倒すのかな。なんて考えてしまいました。
国立劇場の小劇場、初めて入ったのですが字幕も出るんですね。
買ったパンフレットに床本集はついていたけど、舞台のすぐ横に字幕が出ると細かな言葉や心情がリアルタイムでわかるのが良い。そして改めて切なくて美しい言葉が紡がれていることを知れる。
八重ちゃんは小太郎くんのことを可愛がっていそうだな。
私の中では、寺子屋のなかでいろは送りが一番楽しみな場面で、今回はその字幕もあったおかげでより好きな場面になりました。
アニメやドラマのエンディングテーマみたいな感覚なんだけど、絵と連動して歌詞が見えると感情がより煽られますよね。
念願の菅原伝授手習鑑をコンプリートしました。
コンプリートと言っていいのでしょうか?(笑)
やっぱり歌舞伎で観てみたいと思う気がしないでもないけど…
ただ、菅原伝授手習鑑見たさに手を出した人形浄瑠璃というジャンル。話を知っていたことも大きかったとは思いますが思っている以上にハードルは低いですよ。
生身の役者ではない人形が演技をしている(ようであり操るのは生身の人間、声も生の人の声)。不思議な感覚と感動があります。楽しいよ!
そんな感じで軽く来てしまった文楽公演ですが、どうやら豊竹英太夫改め六代目豊竹呂大夫襲名公演だったようです。
大向こうとは違いますがお名前や「六代目!」などの掛け声がたくさんかかってテンション上がりました。
襲名口上も歌舞伎公演の時みたいにゆかりのある太夫さんや三味線方さんがチャーミングなエピソードなんかを語ったりして。
和やかでおめでたい、全然知らなかった人なのに不思議とジーンとしましたね。おめでとうございます。
きっと襲名ということもあったのでしょう。
チケット取るのに少し苦労したけどまた観てみたいなー。文楽公演自体がそんなに多くないらしいのでまた頑張ってチケット取ろうと思います(笑)
あとは、歌舞伎の賀の祝も観ることですね!
それに推しが出ていればモアベターなのでよろしくお願いします。
ツチカワ